(2025年度(2025年4月〜2026年3月)活動報告)
シェムリアップ州において2024年度から継続して緑化推進事業に取り組んでいます。アンコールワットで知られる同州は、カンボジアを訪れる観光客の約7割が訪れ、経済開発に伴う観光地化や人口増加が進んでいる地域です。それに伴って森林伐採の深刻化・進行と生物多様性の損失、雨水の浸透能力の低下に伴う表面流出の増大と土壌や汚濁物質の流出の顕著化など、環境リスクが高まっています。また、従来から非木材林産物に依存してきた地域住民の生活環境にも大きな変化を生じています。こうした環境リスクを軽減し、地域住民の生活安定を図るため、本事業では植林活動を通じて住民自身が森林の保全・管理に主体的に取り組む事業を推進しています。フェーズ1では中学校で植林活動を実施し、2025年6月の補植活動を含め計5,750本の苗木を植えました。延べ350名が参加し、そのうちアンケートに回答した40名全員が「森林や生物多様性の重要性を理解したので、今後も活動に積極的に参加したい」と回答するなど、住民の環境意識と参画意欲の高まりを確認することができました。フェーズ2では、フェーズ1で植林活動を実施した中学校に隣接する共有地において、5,600本の植林を実施しました。併せて、住民を対象とした「森林と生物多様性の重要性に関するワークショップ」を開催するとともに、形成された森林管理住民グループに対して森林管理に関する研修を実施しました。これらの活動を通じて、地域住民の森林保全や生物多様性の重要性に対する理解が深まりました。特に、森林管理住民グループの形成は、今後も継続した保全・管理活動の基盤づくりとして重要な一歩となりました。2026年6月には補植活動を実施する予定です。併せて、フェーズ3の植林活動に向けた計画も進めています。

持続可能な森林管理を目指した緑化推進活動 (1-1)
(カンボジア国シェムリアップ州)
トボンクムン州では、1990年代以降、大規模なプランテーション農業の拡大に伴い、森林伐採が急速に進み、生物多様性の宝庫であった混交林の減少と劣化が進行しています。事業対象地域では森林の減少により薪炭材の確保が困難となり、地域住民の間で森林再生や持続可能な森林管理への関心が高まっています。フェーズ1では、トボンクムン州の小学校と寺院において、補植活動を含め合計5,600本の苗木を植林しました。特に環境教育の機会が限られている児童にとって植林活動の意義は大きく、積極的に楽しみながら取り組んでいました。学校・地域・保護者が一体となった協働体制が形成され、植林活動に合計335名が参加しました。モニタリングの結果、小学校における苗木の生存率は干ばつの影響で、当初25%に過ぎませんでしたが、水タンクの設置と頻繁な潅水により35%にまで回復しました。さらにフェーズ2では、トボンクムン州メモット郡の寺院において、合計5,600本の苗木を植林しました。寺院の住職のみならず、子どもを含む多くの地域住民が植林活動に参加しました。傾斜地を含む場所での植林であったため、作業は容易ではありませんでしたが、参加者は協力して積極的に植林活動に取り組みました。寺院を拠点とした植林活動は、地域住民が参加しやすく、継続的な管理体制を構築しやすいという利点があります。また、子どもを含む地域住民がともに参加したことで、森林再生に向けた意識を幅広い世代に渡って共有できるよい機会になりました。2025年12月にモニタリングを実施した結果、猿による食害が一部見られたものの、80%の植林樹木が生存していることが確認されました。今後、雨期の始まる2026年6月には補植活動を実施する予定です。併せて、今後も定期的なモニタリング活動を継続していく予定です。

里山再生のための緑化推進(1-2)
(カンボジア国トボンクムン州)
本事業は2023年度から2024年度にかけて、コンポンチャム州、トボンクムン州、シェムリアップ州の学校緑化や森林再生等の緑化活動を実施した植林地において、2年目と3年目の植林後調査と保育活動に取り組むものです。コンポンチャム州では2023年度に、森林減少が著しい全10郡の農山村域における共有地を対象に、森林と周辺環境の保全を目指して植林活動を展開しました。各植林地では、地域住民によって組織された森林管理グループが継続的に保育を担っています。トボンクムン州では、2023年度に16の小学校を対象として学校緑化と環境教育を推進しました。また2024年度には、農地拡大による急速な森林資源の消失に伴い、資源の宝庫であった湖の生物多様性が脅かされていることから、その保全を目的とした湖畔の緑化を推進しました。各小学校の教員や、湖の周囲に住む農家や漁師が主体となり、植林地の保育やモニタリングを実施しています。シェムリアップ州では2024年度に、急速な農地開発により森林資源を失った地域を対象として、在来樹種と換金作物の間作によるアグロフォレストリーを推進しました。現在は、現地住民で構成された森林パトロール隊が植林地の保育や換金作物の生産に取り組むとともに、設置された苗床で育成した苗木を補植し、植栽面積の維持に努めています。今後も定期的な巡回、地域住民との協働、さらには住民の能力強化を通じて、継続した植林後調査と保育活動を推進していきます。

緑化推進を目指した植林後調査と保育活動 (1-3)
(カンボジア国トボンクムン州)