(2024年度(2024年4月〜2025年3月)活動報告)
トボンクムン州では天然ゴムを中心とした大規模なプランテーション農業が拡大し、2000 年以降、生物多様性の宝庫であった混交林が著しく減少しています。そこで本事業では、地域住民が森林資源や自然に対する親しみや興味を持てるように、森林環境教育を実施する機会の創出を目指しています。フェーズ3では、地域における森林環境教育をさらに定着させるため、地域住民や小学校が中心となって活動しています。具体的には、植林活動、小学校を対象とした森林環境教育(ネイチャーゲーム)の実践、小学校における在来樹種の苗木生産、そして、森林環境教育を推進するための実施者(教員)向けガイドブックの作成等を行っています。2024年7月から8月にかけてChitheang 湖周辺域で植林活動を実施し、農業と漁業を生業とする地域住民で形成された森林保全チームによって植林地は保育管理されています。しかし9月中下旬にかけてメコン河で氾濫が起こり、カンボジア国のみならず、メコン流域の5カ国で洪水被害に見舞われました。その影響で植林地の大半が10日間ほど水没しましたが、その後のモニタリングによって半数以上の植林樹木は生存していることが確認されました。森林保全チームを中心とした地域住民は下刈り作業を実施し、冠水後の雑草繁茂による二次被害を最小限に留めています。モデル校のKouk Srok小学校およびOm Peak 2小学校では、総計約6,000本の在来樹種の苗木生産を継続しており、12月の補植活動において一部の苗木が使用されました。また、小学校教員が中心となり推進しているネイチャーゲームについては、その実施方法や目的が整理され、森林環境教育実践者向けガイドブックとして出版されました。トボンクムン州教育局が推薦する教材として、このガイドブックが州内の多くの小学校で活用されることを目指しています。
苗木生産のための発芽処理や育苗管理の実践 (3-1)
(カンボジア国トボンクムン州)
シェムリアップ州では、経済成長に伴う人口集中や観光地化の進展に伴い著しく森林が減少し、2000年時点で存在していた森林のほぼ半数が失われています。そこで本事業では、持続可能な開発を目指す森林保全を進めるために、植林地におけるアグロフォレストリーシステムの導入を軸に、希少在来樹種の苗木生産、堆肥づくり、ESD(持続可能な開発のための教育)の推進に取り組んでいます。生物多様性を考慮した植林地では、植林区画を全15ブロックに細分化し、在来種4種、合計9,000本を植林しました。その後、陸稲を間作したアグロフォレストリーシステム下の植林地を森林パトロール隊が保育管理しています。11月に実施した活着率調査では79%の生存木を確認するとともに、森林パトロール隊が補植活動を実施しました。設置した苗床では10,000 本以上の希少在来種の苗木生産が継続され、遺伝的多様性の保全にも継続して取り組んでいます。更に、現地で入手可能な有機資源を再利用して完熟堆肥を2サイクル生産し、植林地管理や苗木生産に利用しています。ESD の推進に係る活動では、Kna Krao村の住民を対象として参加型農村調査法(PRA)を取り入れた ESD ワークショップを全3回開催しました。その結果、ESDワークショップに参加することによって、地域住民の森林消失に対する問題意識が大きく向上することが確認されました。本団体では、ESDワークショップとアンケート調査を通して収集したデータを定性的、定量的に解析するとともに、プロジェクトサイクルマネジメント (PCM) における問題分析と目的分析を実施して、Kna Krao村における森林消失の原因や現地住民への影響を把握しました。その結果、森林資源の保全・再生・持続的利用の推進と将来を担う人材育成に向けた仕組みづくりの必要性が示されました。本団体とカウンターパートは引き続き地域コミュニティと対話を続け、課題解決に向けて支援を続けていきます。
作成した完熟堆肥を利用した苗木生産 (3-2)
(カンボジア国シェムリアップ州)
カンボジアでは、2006年時点で国土の60%を覆っていた森林面積が、開発行為などにより2016年には45%に減少し、自然資源の枯渇や気候変動によって高まる自然災害のリスクに、人々の生活が脅かされています。国際緑化活動の重要性や「緑の募金」が果たす役割について研修員が理解を深めることを目指し、カンボジアで2025年2月13日(現地着)から2月21日(現地発)に至る 9日間、「緑の国際ボランティア研修」を実施しました。本研修では、NGO が取り組む植林活動地の視察、植林活動体験、地域住民への聞き取り調査や意見交換を伴う農山村調査等を実施しました。そして現地で学んだことを総括し、研修成果発表会では「Sustainable Forest Resource Management in Cambodia」に向けた具体的な検証結果やアクションプラン等の発表が行われました。具体的には、「@Sustainable Utilization of the Forest」、「AForest Resource Conservation」、「BPromoting Forest Conservation and Utilization」のテーマ毎に3つのグループに分かれ、設定した仮説に対する検証を進めていきました。検証の過程で各グループは地域住民への聞き取り調査や意見交換会を実施しました。その中で研修員はカンボジアの森林管理の現状やその背景を学び、人と自然との共生の在り方や持続可能な開発について考察を深めました。最終日には研修成果発表会が開催され、研修の総括と仮説の検証結果とともに、持続可能な森林管理に向けた具体的なアクションプラン等を発表しました。
緑の国際ボランティア研修 (3-3)
(カンボジア国シェムリアップ州)